昨日、トイレで手を洗っている時にふと、
「今この鏡に幽霊が映っていたら、僕は友人のところに戻って何と言うだろうか。」
と考えました。
伝統的には、お化けを見た際には、
「で、出た~!!」
というセリフが、第一選択として推奨されている訳ですが、
どうも自分は言いそうにない。リアリティが全くない。
と考えたわけです。
そこで、友人たちに「もしお化けを見たら何て言うか」を聞いてみたところ、思いのほか話が盛り上がり、そのまま飲み会の席まで話が持ちこされることになりました。他に話すことがないんでしょうね。
まあ、それはともかく、友人たちから出た意見では、
・どんなお化け/幽霊が出たかによる。
という鋭い着眼が示された上で、
・「何かいる・・・。」「何かいた・・・。」
・「△×○〒÷・・・!!」と言葉にならない。
・言葉が出ず、誰かに何か聞かれて初めて「・・・今そこで・・・」と説明できる。
などの複数の候補が示されました。
そして予想通りと言いますか、
・まず間違いなく「で、出たー!!」は言わない。
という点で一致したんですね。
(余談ですが、昨日の会話の中では、「何かいる・・・」「何かいた・・・」が、
”「幽霊」や「お化け」という単語を使わずに、「何か」がいると描写をすることで、「何か分からないものを見てしまった恐怖」を的確に表現している”
という理由により、なんか評価されていました。)
しかし、「で、出たー!!」好きの僕としては、どこか納得がいかない訳です。
あんなに庶民に愛されたセリフをこんな簡単な話し合いで葬ってしまっていいのか。いや、ダメだ。
「で、出たー!!」というセリフをリアリティを持って言える条件は無いのか!
そう思って、話を振ってみたところ、非常に面白い意見が出されました。
・「で、出たー!!」というセリフは、「出る」ことが予め期待されている(あるいは予想されている)場合にしか使用されない。
というのです。
なるほど確かに、「あぁ、出るぞ・・・出るぞ・・・」と思っているからこそ「で、出たー!!」という言葉が出てくる訳です。
これは説得力があるぞ。
お墓とか幽霊屋敷でなら「で、出たー!!」って言えるかもしれないな。
そう思ったんですが、ここでまた疑問が。
江戸時代の人たちは、道を歩いていて、突然、全く予期しないかたちでのっぺらぼうに出会っても「で、出たー!!」と言うじゃないか!
これはどうだ、上手く説明できるのか!と思い伝えてみると、さらに面白い意見がでました。
・江戸時代の人たちは、現代よりもずっと分からないもの、魑魅魍魎の世界を身近に感じていて、いつどこで妖怪、幽霊、お化けに出会っても不思議ではないと感じていた。だから、突然ののっぺらぼうとの出会いも、彼らにとっては突然ではない、ある程度予期されたものなのである。
うーん!参った!納得!そうに違いない!
こんな話をし続けるとは阿呆ばかりだと思っていたら、実は賢者ぞろいでした。
こうして、「お化けを見た時に何て言うか」という議題を通じて、(先日も探偵ガリレオについての話をここに書きましたが)現代は「よく分からないもの」は受け入れられない時代なんだな、昔の人が「で、出たー!!」とすんなり受け入れてしまうものを、「・・・何かいる・・・」というようにしか描写できない時代なんだな、ということを実感した次第です。
たった一つのセリフにも、そこには文化が潜んでいるんだぞ、というお話でした。
(大野)