ちょっと報告が遅くなってしまいましたが、5月6日、無事『本読み会』開催いたしました。
今回は共同主宰の松山が不参加ということで、レポートも私(大野)が書かなければいけません!私はいつも、当日はお客さん気分で参加して、本読みが終わったらすぐ読んだ本のことは忘れていく感じなんです。今回は慣れない作業に困っておりますが、まあササっと書いていきましょう!
今回は、アーノルド・ウェスカー作『かれら自身の黄金の都市』を読みました。
自分たち自身の手で理想の都市を建設するという夢を持った若き青年たちが、年を重ねる中で現実にぶつかり、妥協を重ね、夢の実現と引き換えに若さや友情を失っていくという、苦みのあるお話です。
ウェスカーは、特に初期三部作など、一生懸命理想を追うことの大事さを伝えようとしている人という印象を受けるんですが、この作品は挫折と諦めを書いているようなところがあって、少し意外な感じもしました。
特徴的なのは戯曲の構造で、主人公アンドルーたちの若き日の姿が、芝居の要所要所に回想シーンのように挿入されています。常に過去と現在を天秤にかけながら、何を捨てるか決断していかなければならないアンドルーの苦しさが、観客にも体感できる仕掛けです。ウェスカーは、「演劇センター42」での挫折にまつわる自身の想いを戯曲にこめたのかも知れません。
ただ、やはりウェスカー。理想への想いは消えていないようで、劇中には、「未来の人々が現在をふりかえり、根本原則にもとずいて行動したものがいたことを知りたがる」というセリフが、印象的な形で何度か語られていました。
自分は失敗した、だけど自分は理想にもとずいて行動した。苦みに耐えながら、それを伝えようとしているかのようです。それでも戯曲を書く。そのことがすでにウェスカーの意志の表明と言えるのかも知れません。
今回は時間ギリギリで読み終わり、読後に参加者さん達と話し合う時間が取れませんでしたが、きっと皆さん、作品を楽しまれたことと思います。なかなか上演の話が聞こえてこない作家ですが、現代にもどこか光るものが感じられる作家だと思いました。良い上演を観てみたいものです。
さて、この辺りで今回のレポートは終わりにしたいと思います。次回はイタリアのノーベル賞作家、ピランデルロ。もう開催まで1ヶ月を切ってしまっているので、すぐに開催情報をアップする予定です。そちらも是非チェックしてみてください!
(大野)