まだ大会のレポートもアップしていない中でなんですが、9月22日の『戯曲を読む会 全国大会2019』にご参加いただいた、「戯曲を読む会@東京演劇アンサンブル」さんに、昨日(2019.10.06)参加してまいりました!
『本読み会』では、どうしても“主催者”として戯曲を読むことになるので(当然ですが)、久々に“一参加者”として戯曲を読む経験は新鮮さたっぷり!戯曲を読む楽しさにどっぷり浸かることができました。
以下、レポートです。
会場は西武新宿線田無駅近くの公民館。江戸川区住まいの私にとっては、遥か彼方、遠方の地です。見知らぬ土地、見知らぬ建物に一人で向かい、見知らぬ人たちと戯曲を読む・・・結構ドキドキしますね!『本読み会』に飛び込んでくる人たちも、このドキドキを味わいながら参加しているのでしょうか・・・皆さんの度胸とアクティブさに改めて感心します。
会場に入り、まずは主催のお二人(雨宮さん、和田さん)にご挨拶。参加費の500円を払うと、資料を渡されました。
そう、資料があるんです!しかも3枚も・・・。『本読み会』でも何度か資料的なものを用意したことがありましたが(松山がね)、結構手間もかかるし、下手なこと言えないし、大変なんです(松山がね)。主催のお二人が真面目に読む会に取り組んでらっしゃることが伝わります。
さて、今回読んだ戯曲は、ベルトルト・ブレヒトの『カラールのおかみさんの鉄砲』という作品。私は未読の作品だったので、これは良い機会!と参加を決めました。渡された資料を見てみると、内容はスペイン内乱に関するものです。どうやら作品に関係するらしい・・・。円形に組まれた長机の一角に向かい、資料に目を通しながら開始を待ちました。知らない顔ぶれの中に、『本読み会』常連さんのお顔もあり、ちょっと安心します笑。
開始時間になり、まずは参加者の自己紹介から始まります。ようやく周りの皆さんの素性が分かってきました笑。どうやら参加者は全部で12人のよう。東京演劇アンサンブルの俳優さんらが数人参加されていましたが、その他にも演劇関係者の方や、また演劇関係でない方も参加されていました。(ちなみに今回から学生無料だったそうなのですが、残念ながら学生さんの参加はなかったとのこと。これを読んでる学生諸君!悪いことは言わぬ、ぜひ参加したまえ!)
その後、主催の雨宮さんから、スペイン内乱に関する簡単なレクチャーが入ります。人物相関図、スペインの地図など眺めながら、資料に目を通していき、基礎的な知識を頭に叩き込んだところで、次は配役の時間。「戯曲を読む会@東京演劇アンサンブル」さんでは、最初に全ての配役を済ませてしまい、一度読み始めたら止めずに、最後まで読みきるスタイルのよう。細かく止めながら配役を変えていく『本読み会』スタイルとは大きな違いがあります。
役の決め方も独創的。なんと、男女別であみだくじを引くんです! 私がいただいたのは、前半の「神父」の役でした。参加者によって多少の台詞量の差はありましたが、どれも誤差の範囲内。レクチャーといい、配役といい、丁寧なファシリテーションです。今回は1時間程の短編ということで、進行には余裕があるよう。ここで一度休憩を挟んでから、とうとう本読みに入りました。
『カラールのおかみさんの鉄砲』は、まさにスペイン内乱の真っ只中、1937年に書かれた作品です(ブレヒト自身はデンマークに亡命中だったそう)。読んでいくと、民衆を暴力で抑圧しようとするフランコ将軍の反乱軍に対して、犠牲を払っても戦うべきだと考える者と、家族を再び失うことへの恐怖から戦いへの関与を拒絶する者との間での、激しい価値観の衝突が描かれていました。そこはブレヒトのこと、最終的には、抑圧に対して民衆は立ち上がるべきだ、という価値観を提示するのですが、その過程や展開が、例えばその後書かれた『アルトゥロ・ウィの興隆』などに比べると、だいぶ性急な印象を与えます。
ブレヒトの手による前書きには、「これはアリストテレス的(感情移入的)劇作法で書かれている」とされており、ブレヒト戯曲の最大の特徴である「異化効果」を狙って書かれたものではないことが分かりますが、この戯曲はむしろ、リアルタイムでスペイン内乱を戦っている人民戦線に向けた「応援演説」と言った方が相応しい作品なのかもしれないと感じました。
この作品を完成させた後、ブレヒトは彼の代表作となる作品群を驚くべきスピードで次々に書き上げていくことになるのですが、『カラールのおかみさんの鉄砲』の生々しさ、リアルタイム性には、動乱の時代の中に呼吸をする作家の姿が色濃く感じられました。
作品を読んだ後は、1時間ほどの残り時間をたっぷり使って、参加者同士で作品について語り合いました。皆さん、時代背景についても、ブレヒト戯曲についても造詣が深く、かなりハイレベルな話し合いです。この戯曲が書かれてからの80年余りの時の流れ、歴史を踏まえて、作品を“異化”していくような時間でもありました。短編作品ならではの贅沢な時間の使い方、『本読み会』でもこんな進行をしてみたくなりました。
閉会後は、幾人かの方達と酒席に流れ、交流を深めました。同じ“読む会”同士、これからも支え合いながらやっていきたいものです。戯曲談義に花を咲かせ、こちらも楽しい時間になりました。主催のお二人、参加者の皆さん、どうもありがとうございました!(大野)