ブレヒトは、「大人の寓話」でした。
7月15日(土)に行われた第36回『本読み会・ブレヒト』。
今回も大勢の参加者に恵まれて、盛況のうちに幕を下ろすことができました。
『ゼチュアンの善人』は、言わずと知れたブレヒトの代表作。中国の四川(ゼチュアン)を舞台に、善人であろうとする主人公が、善人のままではとても生きていけない現実に直面し、もうひとつのパーソナリティへと引き裂かれる超社会派戯曲です。
舞台は中国の四川ですが、読んでいくうちにどこか無国籍な街の中へ放り出されるよう。きっと砂煙の上がるような舗装されていない道路。いろんな臭いの立ち込める雑踏に佇む粗末な煙草屋。そこへ欲望をむき出しにした住人たちが次々と押しかけてくる。そんなゼチュアンの光景を思い浮かべながら先へと読み進めます。
神様のために善人でいようとする主人公シェン・テ。それを許さないゼチュアンの街。それでも善人でいるように求めるのは神様。生きるためにシェン・テが作り出す冷酷非道な人格シュイ・タ。本当は誰が善で、誰が悪なのか?そもそも善と悪とは何なのか?さらにそれを超えて、生きるとはそもそもどういうことなのか?
この究極のテーマを、悲劇あり、喜劇あり、恋あり、裏切りあり、そして歌あり、最後には俳優による締めくくりの台詞ありという、極彩色に彩られた舞台を通じて私たちに考えさせる。まさに大人の寓話。アダルト戯曲。演劇の全てが詰め込まれていて、しかもそのひとつひとつの要素が非常に質の高いものであることに驚かされます。
今回は演劇経験者も何名か参加してくださり、読みとしては非常に質の高いものになりました。さらに、高校演劇部の生徒さんも加わる異色の回。「難しかったです」という感想は正常そのもの。余談ですが、主催の大野、松山両名とも、実は高校演劇経験者。おじさんたちが君たちくらいのとき、ブレヒトなんか読んだこともなければ名前も聞いたことなかったよ。もしこの先も演劇を続けることがあったら、早くしてブレヒトを読んだ経験はきっと花を開くと思うぞ。
ご参加いただいた方々、暑い中どうもありがとうございました。
今回来られなかった方も、次回お待ちしております。
(松山)