戯曲の探し方

戯曲と小説の最も大きな違い、それは一体何でしょうか。
それはもしかしたら文学形式の違いなどではなく、「入手のしやすさ」かも知れません。

フラッと立ち寄った本屋で、人気作家の最新作から、かび臭い古典まで手に入る小説とは違って、戯曲の場合は、文庫の中に紛れ込んだ超・有名戯曲が数本見つかれば御の字です。

しかしだからこそ!
いい戯曲に出会ったときの「見つけた…!」という感じはクセになるのかも知れません。
みなさんは、どうやって戯曲を手に入れていますか?

ここでは、皆さんに「戯曲の探し方」をご紹介いたします。

 

戯曲の探し方

1、公立図書館で借りる

お近くの図書館に行って目当ての戯曲がある場合は、おめでとうございます。

ない場合でも、近隣の館に蔵書があれば取り寄せてくれます。事前にどこの図書館に蔵書があるのか調べたい場合は、図書館のホームページで検索してみましょう。

たくさんの図書館の蔵書から一気に探したい場合は、

東京の公立図書館情報から都内公立図書館の蔵書を検索したり、

国立国会図書館サーチ(全国の公立図書館の蔵書検索)を利用すると、

お目当ての戯曲を一発で見つけてくれます。

ちなみに上のリンクに名前の出ている日本最大の図書館・国立国会図書館には、国内の出版物ならば、本も雑誌も基本的に全て所蔵されています。見つからないものはまずありません。
ただし、国会図書館で可能なのは館内での閲覧のみ。貸し出しが出来ないのです。
複写(コピー)の申し込みも可能なんですが、一作品まるごと複写することは許可されないので、図書館内で楽しむことが基本になります。

 

図書館で戯曲を探す際に参考にしたいのが、図書館の全ての本についている分類番号です(NDC分類といいます)。
たとえば日本戯曲の場合は「912」です。英米戯曲は「932」です。つまり、「9●2」の番号が戯曲を探す目印になるのです。(●の中に入る番号によって国が変わります。)
また「9●8」に分類される作品集や文学全集などの中にも、多くの戯曲が隠れています。

参考:「文学」のNDC分類一覧

その他、「文学」の分類には入らないもの、例えば「テアトロ」や「せりふの時代」などの演劇雑誌のバックナンバーの中にも、戯曲が数多く収録されています。中には海外戯曲の翻訳モノなど、単行本などでは出版されていない作品も収録されていたりするので、そういったバックナンバーを漁ってみるのも面白いかもしれません。

 

2、大学図書館で借りる

公立図書館で見つからないような作品も、大学図書館には眠っているものです。
マイナーな作品では、大学にしかないということもしばしばあります。

中でも狙い目は、演劇を専門に教えている学部や学科がある大学。

都内でいうと、早稲田大学や明治大学はその筆頭でしょう。その大学を卒業していなくても、たいていの大学では一般利用が可能です。もちろん、大学によって利用の自由度は異なりますが。

先にご紹介した東京都立図書館の統合検索サービスのように、大学図書館でも横断検索というのがあるのです。全国のどこの大学にお目当ての戯曲があるのかがすぐに分かります。

それがCiNii

大学の図書館からでも使えますし、ご自宅で調べてから出かけるのもよいでしょう。
ただ大学の場合、授業でその戯曲や作家を扱っている時期とぶつかると、学生同士が取り合うように借りていることもありますので、まあ、そこは運ですね。

また、図書館ではないですが、新国立劇場情報センターでも様々な資料の閲覧が可能です。私は数回しか利用したことがないのですが、上演台本や映像資料もかなりの数があったので、近くにお住まいの方は利用してみてはいかがでしょうか。資料の検索はこちらです。

 

3、思い切って買う

借りて読んでもいいんだけど、どうせなら所有したいという方必見です。

①足で探す場合

街の本屋さんに置いてある戯曲はかなり限られます。

まずは中型以上の書店でも見つけられる、出版各社の文庫のラインナップから。
岩波文庫には、今でもいくつかの代表的古典戯曲が入っていますし、新潮文庫やちくま文庫、ハヤカワ演劇文庫、白水uブックス(これは新書サイズですが)などにも、シェイクスピアやチェーホフなどを中心にいくつかの有名戯曲が入っています。(三島由紀夫や安部公房などの様に、小説の群れの中にひっそりと戯曲が混じっている場合もあるので注意です。)

紀伊国屋や丸善などの超大型の本屋であれば、芸術関係の本棚の片隅に「演劇」コーナーがあるはずです。そこに行けば、有名劇作家の全集や人気劇作家の最新戯曲などがハードカバーで並んでいるでしょう。

街の本屋さんで見つかる戯曲は、大体これくらい。図書館でも比較的簡単に手に入る有名戯曲ばかりといった印象で、少し珍しい戯曲になるとなかなか手に入らないものです。なぜなら売れないからですね。経済とは別の時間が戯曲には流れています。さて、いきましょう。

 

新刊ではない戯曲を足で探すなら、古本屋をあたるのが正統です。
どこの古本屋か?そりゃやっぱり神保町です。
神保町から九段下まで伸びる古本街には、各専門ごとに分かれた古本屋がぎっしり立ち並んでいます。その中には当然「文学」に強い古本屋があって、希少な戯曲を扱っているお店も少なくありません。
あまりにも古本屋の数が多いので、

BOOK TOWN じんぼう

というサイトであたりをつけてから出かけるといいかもしれません。
ちなみに私は学生時代、「田村書店」「小宮山書店」「矢口書店」「北沢書店」あたりをうろうろして戯曲を探したものです。

ときおり開かれているワゴンセールに目当ての戯曲が出ている場合は、迷っている暇はありません。これは神保町に限らず、デパートや青空市のときもそう。即買いです。戯曲は「ご縁」の要素が強いところが、不便でもあり面白くもあるんです。

 

②インターネットで買う場合

最近はキンドルやコボなど電子書籍も台頭していますが、さすがに戯曲はあんまりラインナップされていないようですね。
「絶版をいかに手に入れるか?」これが戯曲探しのキーワードです。

おなじみのAmazonに新品の在庫があればいいのですが、古い戯曲を新品状態で手に入れるのは至難の業。もともと刷られている数が少ないのですね。でも、Amazonは中古も扱っているので見落とさないように注意しましょう。

さて、Amazonでも見つけられない場合にはどこで探したらいいか。
おすすめなのは、全国の古本屋から目当ての戯曲を一斉に検索できるサービス。

日本の古本屋や、スーパー源氏といったサイトです。

これらのサイトには何度お世話になったか分かりません。古本検索だけでなく、全国で開かれる古本市の情報なども載っているのが心憎い。

あるいは、①と②を組み合わせて手に入れるのもいいですね。インターネットでどこの古本屋に在庫があるか調べて、足で買いに行く。こうすると送料もかかりませんので、お近くの方はこの方法がオススメです。
出向いてみれば、思わぬ戯曲との出会いもあるかもしれません。

以上、戯曲の主な探し方についてご紹介しました。



そして最後に、一冊だけ本の紹介を。2016年、ついに「戯曲の事典」なるものが発売されました。その名も『日本戯曲大辞典』(白水社)

明治時代から現代まで、1000人の劇作家と10000を超える戯曲を網羅していて、編集者の情熱と根気に頭が下がります。事典をめくりながら「おもしろそう」と思った戯曲にアクセスしてみるのもいいですね。
海外戯曲バージョンも出版されると嬉しいのですが、そうなるとブリタニカ並みの大事典になりそう・・・翻訳モノは、図書館でウロウロ探すのが良さそうです。



さて、これでこの記事も終わりです!
もうちょっと手軽に気軽に戯曲が手に入る世の中になるといいんですが、嘆いても仕方ない。宝探しのような感覚で、戯曲を掘り出していきましょう!
いい戯曲、いい本屋など、見つかりましたら是非教えてくださいね。
それでは。