出張!『本読み会』in 生活心理の会(2018.8.26)レポート

みなさん、こんばんは。今日は珍しく、出張!『本読み会』のレポートです。
前回、南町田福祉ネットワークさんから依頼を受けて出張し、「戯曲を読もう―心と身体を開く声―」という題で、岸田国士を読んだのが昨年11月。
出張!『本読み会』in 南町田レポート



8月末のことなので、もう二週間ほど経ってしまいましたが、今回は神奈川県は戸塚まで出張し、心理士の皆さんとシェイクスピアを読んできました。私大野は、普段は心理の仕事をしているのですが、今回はそちらのつながりから依頼を受けたという流れです。演劇×心理。どちらも”人”を扱う仕事です。そんなに遠い業界ではないんです。

さて、以下早速レポート。こちらのレポートは演劇畑の松山が書いてくれました。

 




 

いつもの『本読み会』とはひと味違う活動をしてきました。戸塚まで遠征し、普段は児童養護施設などで働いているみなさんと一緒に戯曲を読む。出張!『本読み会』 in 生活心理の会です。

そもそも、「どうして戯曲なんぞ読もうと思ったのですか?」の疑問を投げかけると、「飲み会でそんな話をしてたら盛り上がって・・・」とのこと。演劇の企画などが決まるときも、ほぼ大半は飲みの席で決まります。意外な親近感を覚えつつ、読むのはシェイクスピア『夏の世の夢』。これも「夏だから・・・」という、なかなかロックな理由でした。

『夏の世の夢』は、場所を大きく移動しながらドラマを展開する戯曲です。冒頭は宮廷のシーンから始まるものの、駆け落ちしようと恋人たちは森へ姿を消します。それを追う男女もまた森へ。同時に素人劇団もどういうわけか森で稽古をしようということになる。そこへ妖精の王と王妃も交わって大混乱に陥るコメディなのですが・・・。
宮廷というのは人間社会に張り巡らされた秩序の象徴です。秩序から逸脱した人間たちが、森、つまり混沌の支配する場所へ移行する話と読むこともできます。『お気に召すまま』なんかも宮廷→森のプロットを含む喜劇ですね。シェイクスピアは場所の移動を巧みに利用してカオスを作り出します。このあたり、心理を専門にやっている人にはどんなふうに映ったのでしょうか・・・。

よく「台本を読むときは感情をこめて」とか、「俳優は役の感情を表現する」と言われます。しかし、意外にも戯曲には感情や心理のことが直接書いてあるわけではありません。優れた戯曲ほどそう。
では、戯曲には何が書かれているかというと、登場人物の「行動」です。「ああ、悲しい」という台詞は、悲しい感情を表しているのではなく、登場人物が「ああ、悲しい」と言ってる、という行動を表している。読み手は「行動」だけを頼りに状況や人間関係を読み取りながら戯曲を読むしかありません。これができるかできないかが、「戯曲を読める、読めない」の差になってきます。

とはいえ、普段の『本読み会』では、なるべく思い思いに読んでいただくことを大切にしています。たとえ戯曲の解釈として大きく逸脱していたとしても、その人の身体から出てくる声にまずは耳を傾けて戯曲を読む。そうすることによって、演劇の言葉は決して書かれた文字ではなく、人間の身体を通して初めて立ち現れるものだと実感できるからです。良質な戯曲であれば、お互いに声に出して読むだけでドラマが立ち上がってくることすらあります。

「黙読だとよくわからなかったけど、声に出すと理解できた。」
「同じ役でも読む人の組み合わせが変わるだけで全然ちがった」
「自分が読んでるときは読むのに必死だったけど、人が読んでるのを聞くと面白い話だった」

戯曲を読んでいるとしばしばこういった声が上がりますが、このあたりがまさに本読みの魅力、戯曲の本質そのものなのです。

ただ、とはいっても今回は一回限りの『本読み会』。しかも戯曲を読むのが初めてという方も多いので、本読みの秘訣をこっそり公開しました。

本読みの3箇条
・大きな声で読む
・相手役のセリフの後に間をあけずに読む
・名詞と動詞を少し強調して読む

これは表面的なテクニックのように見えますが、真意は「戯曲をちゃんと読むと自然にそうなる」というところにあります。演劇部やサークルなどで戯曲を読むのに苦労しているそこのキミ、だまされたと思ってやってみてください。これだけでグッと良くなること請け合いです。シェイクスピアの美しくも難解な台詞に四苦八苦しつつ、『夏の世の夢』を読み進めていきました。

普段の『本読み会』ならここで終わりなのですが、今回は特別企画ということで、最後にジュリー・テイモア演出の『夏の世の夢』を鑑賞しました。これは映画ではなく舞台作品を映像用に撮影したもので、スペクタクルな演出を使いつつも戯曲を精密に読み込んでいる傑作。しかもさっき自分で読んだばかりの場面だから、見ていてハラハラするのです。黙読から音読へ、そして文字を離れて身体が立ち上がってくる過程を大急ぎで体験する4時間でした。

個人的には、そのあとの飲み会で出た話が非常に面白かった。カウンセラーの仕事を聞けば聞くほど、俳優の仕事に近いものを感じました。俳優よりよっぽど体系化されてるんじゃないかと思うほどでした。

今度はこちらからお邪魔してお話うかがいたいところです。
生活心理の会のみなさん、ありがとうございました。
(松山)

 




 

以上、出張!『本読み会』in 生活心理の会レポートでした。
生活心理の会の皆さん、どうもありがとうございました。

さて、実は『本読み会』、これまでの15年の活動の中で、いろいろワークショップのようなことをやってきています。戯曲はどんな文学なのか、戯曲はどのように読んだらいいのか、戯曲の面白さって何なのか。15年も戯曲ばっかり読んできているので、戯曲を読むのだけは得意になりました。
戯曲について何か知りたい、戯曲を素材に何かやってみたい。そんなご要望がありましたら、どうぞ『本読み会』までご連絡ください。全くの素人さんから、演劇ズブズブの玄人さんまで、ニーズに合わせて戯曲を使ったワークショップ、デザインいたします!
それでは。
(大野)

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