出張!『本読み会』in 南町田 レポート

『本読み会』15年の歴史でもこんなことは初めてです。
今年は南青山Mandalaさんから「岸田国士を読む」のお声がけがありましたが、なんと今年二度目となる外部からの依頼がありました。



お声がけくださったのは「南町田福祉ネットワーク」。今回は”講演”の依頼です。
「戯曲を読もう―心と身体を開く声―」と題して、台風22号が吹き荒れる中、大野、松山行ってまいりました。

南町田は、渋谷から東急田園都市線で40分の「南町田駅」周辺に広がる緑豊かな丘陵地帯です。
2000年に開業したアウトレット併設のオープンモール「グランベリーモール」が街のランドマークとして広がり、年間700万人を超える来場者を迎えていましたが、東急電鉄と町田市が共同で推進する「南町田拠点創出まちづくりプロジェクト」の一環で、現在グランベリーモールは閉館。2019年に開業を予定する新商業施設の再開発に向けて工事が進められています。

南町田福祉ネットワークは定期的に講演会や会合を行う、ご近所助け合い型の自治組織です。主に健康増進の講演会企画を立てておられるのですが、私たちは本読み以外のことができるわけではありません。ともかく戯曲を声に出して読んでみる。この魅力をお伝えするよりほかない。「講演会」で戯曲の魅力を長々とお話ししても伝わりにくいだろうということで、やはり今回も本読みを体験していただくことにしました。

参加者のみなさんは、初めて戯曲を読む方がほとんどです。そりゃそうだ。かなり本を読まれる人でも、戯曲を読んだことがないというのは決して珍しくありません。むしろ私たちのように、ヒマにまかせて戯曲ばかり読み漁っている方がどうかしているのです。
通常の『本読み会』のように「この戯曲を事前に読んでからいらしてくださいね」ということもせず、今回は本当に初めて戯曲を手に取るところから始めました。しかし、ここから戯曲の魅力をお伝え出来なければ、『本読み会』の名がすたるってもんです。

用意したのはシェイクスピア『マクベス』と岸田國士『紙風船』。

『マクベス』は、ともかく声を出すことに慣れていただこうと、マクベスとマクベス夫人が王の暗殺を決心するシーンを抜粋して読むことにしました。

私の顔に微笑みかけてくるその子の柔らかい歯茎から乳首をもぎ取り子供の脳味噌を叩き出してみせます。さっきのあなたのように一旦やると誓ったなら。
(松岡和子訳)

こういうどぎつい台詞を大声で喋ると、ただ単に「あー!!」と声を出すより頭と身体と想像力が総動員されるので、ともかくあったまるのです。これを皮切りに、戯曲の仕組み、戯曲の読み方、小説や随筆との違い、そして声に出して読むことの魅力など、今まであまり知ることのなかった戯曲の世界をお話した後、本日のメインイベント、岸田國士『紙風船』を読むに至ります。

『紙風船』は全部で12ページほどの短編戯曲ですが、これをさらに3分割して、交代しながら読むことにしました。12ページとはいえ、戯曲を声に出して読み続けるのは思いの外大変なことです。
それともうひとつ。本読みの魅力は、「読む」だけではなく「聞く」ことに隠されています。交代しながら読めば、「聞く」ことに集中する時間が生まれます。戯曲を目で追いながら、相手の読む息遣いに合わせて台詞が立ち上がってくる、その瞬間を是非とも目の当たりにしていただきたかったのです。

出だしこそ「えっ、私の番?」「この漢字なんて読むの?」「カッコの中はどうするの?」と戸惑いつつ読み始めましたが、ページをめくっていくうちに少しずつ流れに乗り、戯曲の中へ分け入っていくのが見て取れます。単純に声が出る、出ない、うまく読める、読めないといった違いではなく、読み手同士の関係が変化していくのです。

今回の参加者はお互いに知っている方が多く、普段会話を交わしたことはあるはずですが、戯曲の言葉を通して対話するのはもちろん初めて。
戯曲の言葉には、対立があり、葛藤があり、敷衍があり、婉曲があり、そして詩があります。そうした言葉は普段の会話で表に現れることなく、日常生活に埋もれてしまうもの。優れた劇作家は埋もれた言葉を掘り起こし、虚構の中で再構成して戯曲を書き上げます。
読み手は、いわば劇作家の作った虚構の人間関係を受け入れながらも、同時に「生の人間」として、相手と言葉を交わすのです。そこには、半ばフィクション、半ば現実という、普段とは異なる人間関係が立ち現れることになります。
相手の声を受け取って、文字を見て、声に出して、相手に届ける。いわば本読みとはこの繰り返しですが、これはかなり複雑なことなのです。
このことが頭をフル回転させ、息を深くすることによって、結果的に健康にもいいと気づいたのは、実は今回のご依頼があったからかもしれません。

結果的に会場には、いつもの『本読み会』で戯曲を楽しむ風景が広がっていました。『紙風船』は二度読みましたが、あまりの上達ぶりに思わず二人で目を合わせてしまいました。「あー疲れた」と「あー楽しかった」が混ざり合っているところも『本読み会』ならではでしたね。

というわけで南町田のみなさん、台風の中お越しいただきありがとうございました!
私たちも勉強になるところの多い会となりました。またの機会がありましたら、是非お声がけください。

(松山)




『本読み会』では、今後ワークショップや講演などの活動も精力的に行っていければと考えております。
これまでの開催でも、戯曲初心者向けの紹介講座だったり、戯曲と他文学の言葉を比較するワークショップだったり、毎回なかなかご好評いただいております。内容はいろいろご相談に乗れると思いますので、もしご興味ありましたら、是非ご連絡いただければと思います!

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