あけましてシェイクスピア!『本読み会』がいつのまにか伝統としてきた新年のご挨拶です。
『本読み会』は今年で11年目。シェイクスピアは全37作品あるので、あと20年くらいはこうやって正月を乗り切れるはずです。
今回の戯曲はシェイクスピア後期の代表作『冬物語』。シェイクスピアが引退を前に書いた一連の作品 ー『ペリクリーズ』、『シンベリン』、『冬物語』、そして『テンペスト』ー は、「ロマンス劇」と呼ばれ、以前とは異なる作風が現れてきました。
それまでは人間同士の愛情、慕情、計略、策略をめぐらすドラマが展開されていましたが、この時期の戯曲になると、いきなり魔法が使えるようになったり、神様が出てきたり、突如嵐に呑まれたり・・・結局最後は丸く収まるのですが、終幕へ向かう道筋が大変自由になっていきます。
それは、エリザベス朝の演劇が次の時代を迎える合図でもありました。まるで、生き馬の目を抜くロンドン演劇界で熾烈な競争を勝ち抜いてきたシェイクスピアが、少し緩めて筆を滑らせているかのような印象を受けます。読んでいても、言葉に囲まれたドラマの中で彷徨うというよりは、シェイクスピア円熟の技法を味わうといった印象で、良くも悪くも「大人の戯曲」に仕上がっているのが『冬物語』です。
他の作家でもそうですが、会の後で「シェイクスピアを初めて読みました」という参加者の方が必ずいらっしゃいます。
これはとても嬉しい。『本読み会』のような地味すぎる団体が、シェイクスピアへの入り口になったとは。「こういう機会でもなければ読まないから」という動機は、『本読み会』設立の動機そのものでもあります。
そして、とてもうらやましい。私はいつのまにかシェイクスピアの全作品を読んでしまいました。多いものでは10回以上。だから、結末を知らずにシェイクスピアを読むことはもうできません。大人になってから初めてシェイクスピアを読む。なんと贅沢な体験か! たとえ読んでいる途中で結末が分かっても、なぜか止まらずページをめくってしまう。それはシェイクスピアが文学ではなく、演劇を描いているからに他なりません。
(松山)
ご無沙汰しています。シェイクスピアは参加したかったのですが、何かと雑事に追われて。代わりに、昨年はNTLの一連の作品を映像で観る事が出来ました。すばらしい。次回の目標はロンドンでの観劇です。
ところで、かっちりとした日本語を読みたくなりました。近々、真山青果「元禄忠臣蔵」あたりを読む予定はありませんか?また、清水邦夫を読むのにも苦労しています。いかがですか、清水邦夫。来月「狂人なおもて往生をとぐ」を観る予定です。ワンダーランドの今年度最後の劇評の課題がコレなんです。
コメントありがとうございます。まだ発表しておりませんが、次回の第52回がラシーヌ、その次の第53回が真山青果の予定です。作品はまだ決まっていませんが、どうぞお楽しみに。
ちなみに清水邦夫『狂人なおもて往生をとぐ』は二年程前にすでに扱ってしまいました(笑)。
大野遙